物語

バラとナイチンゲール(4)

 いかにもクリスチャンの国らしい物語ですが、愛の姿をつきつめていくとこうなってしまうのかもしれません。

 この物語を単に綺麗ごとや夢物語と考えるのではなく、こうした物語が生まれた背景や作者の想いを想像してみることも大切だと思います。Time02083

 この物語の背景には数え切れないほどの辛く苦しい恋愛があり、仮にこの世では成就することのなかったお互いの想いも、その想いに偽りがなく真摯なものであれば、別の世界で報われることもあるということを私たちに教えてくれているような気がします。

 相手に何かを求めるのではなく、ただひたすら与え続けることの大切さを考えてみてはいかがでしょうか?

 ナイチンゲールの歌やバラの香りのように・・・

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バラとナイチンゲール(3)

 けれども神々はダイナスの死を望みませんでした。

 水面に達するやいなや、彼は小鳥の姿にかわったのです。

 それ以来、その流れのそばの潅木のところでは、ナイチンゲールのなき声が聞こえるようになりました。

 毎晩のように愛を歌っているのです。

 その歌声は愛くるしく、高慢なスカイストラの心まで打ちました。

 娘はすっかり歌声のとりことなり、毎晩、岸辺に駆けていっては、ナイチンゲールの歌に耳をすましたのです。

Rose  憧れはつのる一方で、スカイストラの心を焼きつくしました。

 いまにも花のように枯れてしまいそうです。

 彼女はとうとうナイチンゲール恋しさのあまり死んでしまったかもしれません。

 ところが神々はスカイストラの死を望みませんでした。

 春が終わって、ナイチンゲールが歌うのをやめたとき、スカイストラは百枚の花びらをつけた一輪のバラにかえられたのです。

 それ以来、春にはいつもナイチンゲールはバラに愛を歌い、バラは百枚の花びらの香りでナイチンゲールにお礼をします。

 こうしてふたりの幸福には、何ひとつ欠けるものがありませんでした。

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バラとナイチンゲール(2)

 けれども、身も心もささげ、いっさいの持ち物を投げ出してまで彼女を愛していたのは、ひとりの若者だけでした。

 ダイナスです。

 彼は、スカイストラのためなら死んでもいい、と言っていました。

 けれどもスカイストラは笑って相手にしません。Time_02007

 ダイナスがそう言う度に、スカイストラは「そんなの言葉だけと」と言いました。

 ダイナスの心は深く傷つき、とうとう最後のスカイストラに「本気だとわかってもらうには、何をしたらいいか教えてほしい」とたのみました。

 そこでスカイストラは、ふたりの立っている岸のそばを流れる急流を指差して、言いました。

 「もしもわたしのために死ねるというのなら、飛びこんでごらんなさい」。

 そういって彼女はダイナスをからかったのです。

 彼はためらわずに急流に飛びこみました。

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バラとナイチンゲール(1)

 冷たい海の岸辺にある、とても美しい国にダイナスという名のひとりの若者が住んでいました。

 姿は松の木のようにがっしりとしていて、顔はくっきりとりりしく、髪は亜麻色でした。

 彼に会った人は、老若男女を問わずみんな、うっとりと見とれました。

 とりわけ村の娘たちは彼から目を離すことができません。

Naichingail01  ただひとりだけ、彼のことには目もくれないふりをしている娘がいました。

 スカイストラという名前です。

 姿は白樺のようにすらりとしていて、顔は美しく血色もよく、髪は金髪でした。

 彼女に会った人は、老若男女を問わずみんな、彼女の姿が見えなくなるまで目で追い続けました。

 村の青年たちは彼女のことしか考えませんでした。

 みんなはスカイストラのことを夢にまでみました。

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風船(2)

 蒼空をさわやかな春風にのって流れて行く風船を追いながら、少女との別れを想っていた。

 色あせたトタン屋根をいくつも越えて、澄みわたる五月の空の彼方へと吸い込まれて行った。

Baloon02  町外れまで駆けて来て、息をきらせて立ち尽す私の傍を小さなトラックが土煙を巻き上げて通り過ぎて行った。

 荷台には小さく手を振る少女の姿があった。

 今、赤い風船がひとつ、人の手を逃れ、天井に貼りついたようになっている。

 人口の空に頭を押さえつけられ、窮屈そうに首を傾けている風船に比べ、少女の面影とともに蒼空の果てへ飛んで行った風船は幸せに想われた。

 行き場をなくした風船は、持ち主にも見放され、力なくうなだれている。

 「彼女は本当の空を知っているのだろうか。」中空で揺れている白い糸に向かって、私は思いっきりジャンプした。

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風船(1)

 色鮮やかな熱気があおざめたの光の下にあふれていた。

 地下街にひしめく人々の群れはのどかな時間に酔いしれている。

 労働の代価を享受してか、人々の胸はこころもち膨らんで見える。32784

 足取りは軽く、陽気な雰囲気が長い列をつくっていた。

 そのところどころに色とりどりの風船が浮かんでいた。

 往き手をさえぎられた風船はいかにも心細げに見えた。

 若い頃、ふとしたはずみに手を離れた風船を懸命に追いかけたことがある。

 それはごくありふれた風船だったが、その時の私にはかけがえのないものに感じられた。

 それはある少女に渡すはずの風船だった。

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