哀 蛾(6)
秋も深まった頃、聡子は風邪を引いて数日店を休んだ。
「具合はどう?」
「お医者さんはただの風邪だって・・・」
「風邪は万病の素っていうから・・・」
「だいじょうぶだから、本当に心配しないで」
「ダメ!来ないで・・・病気で寝ているところなんか見られたくない・・・」電話の向こうで苦しそうな声がそう繰り返していた。
何度かの押し問答の末、私は彼女の制止を振り切って見舞いに行った。
お見舞い用の果物かごを両手に抱えた私の目に真っ先に飛び込んできたのは、部屋の真ん中にぽつんと置かれた鳥かごだった。
薄暗い夜気の底で、ふたつの影が寄り添っていた。
ほとんど家具らしいものもない殺風景な部屋だった。
私を無理に引き止めようとした聡子の気持ちが痛いほどよくわかった。
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