哀 蛾(8)
聡子は盛岡の高校を卒業し、仙台の化粧品会社でカウンセラーをしていた。
二十歳になった頃、同じ会社のセールスと親しくなった。
渋い感じのする三十男だったらしい。
「やさしかったのよ、はじめは・・・よく待ち合わせをしていっしょに映画を見たわ。何を見たかは思い出せないけど・・・」聡子は小さく首を振った。
それは思い出せないというより、思い出したくないというふうに見えた。
「雨の日にずぶ濡れになって来て、一晩だけ泊めてくれって・・・それからずっと・・・」こんな形でふたりの同棲が始まった。
夢のような日々は長くは続かなかった。
やがて男は麻雀やパチンコに明け暮れ働かなくなっていったという。
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