哀 蛾(7)
「無理いってママに借りてもらったの・・・」鳥かごの前に膝を折り、ほっそりとした背をまるめ、指先を鳥のくちばしへ伸ばしながらそう呟いた。
聞きたいことはたくさんあった。
が、言葉がまったく出てこなかった。
私は立ち尽くしたまま、聡子を俯瞰し、彼女の想いをすべて飲み込んだ。
長い沈黙の後、聡子はゆくりと立ち上がり灯りをつけた。
「逃げて来たの・・・」ふらつく足取りで窓辺に向かいカーテンを閉めながらそう呟いた。
『逃げて来たの・・・』と始まる話は衝撃的だった。
再び鳥かごの前で膝を折り、化粧をしていない蒼白い顔を俯けた。
奥底に封印してしまった記憶の糸をたどるというよりも、新しい記憶をつむぎ出すように聡子はゆっくりと話し始めた。
私の中には躊躇う気持ちもあった。引き返せなくなるという不安もあった。
しかし、好きな人のことは全て知っておきたいという若い好奇心が全てを飲み込んでしまった。
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