哀 蛾(9)
「とってもオシャレなひとだった。会社を辞めてからも毎朝きちんとヒゲをそってコロンを付けて出かけてた・・・」ふたりは毎朝同じ時刻に家を出た。
時には一緒に電車に乗ることもあったが、男はたいてい途中のパチンコ店の中に消えていった。
「それでも、月に何度かは大きく勝つこともあって、機嫌のいい時もあったんだけど・・・負けた時は、たいてい夜中に疲れた顔で帰って来て、わたしを抱いた」
彼女は避妊のために婦人科へ行きピルを服用するようになった。
「子どもができたらどうしようって、その時になって初めて思ったの。バカよね・・・」聡子の目に涙が浮かび、静かに頬をつたった。
そんな男の行く末は知れていた。
すぐに借金がかさみ取り立てが厳しくなっていった。
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