哀 蛾(1)
澄みわたる五月の空に、芽吹きはじめた草木の香りがやわらかな風に舞い、閉ざされた季節から解き放れたものたちの笑顔が春の陽にまぶしい。
私は色のくすんだ冬着のまま、陽だまりの中に立ち尽していた。
凍てつく風雪の中で、時間が長い長いトンネルのように続く北国では、誰もが春の訪れを願っているというのに・・・
道行くものたちの色が淡くなっていっても、私はたぶん冬着のままだろう。
気が遠くなるほど長かった季節はすでに去ったはずなのに・・・
華やかなキャンバスからこぼれおちそうになっている色彩さえ、半透明に凍りついた窓ごしに眺めている背中を、薫風が哀れむように吹き過ぎる。
哀しみをおびた女の視線が私の意識の奥底にまつわりついてくる。
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投稿 ジョブ板 | 2008年4月25日 (金) 15時14分