« 2008年3月 | トップページ | 2008年5月 »

2008年4月

哀 蛾(2)

 「ジューンブライドっていい響きねぇ。」女の瞳の奥にほのかな酔いがのぞいていた。

 「六月の花嫁ってほうがよかないか?言葉の響きとしてはさぁ・・・」

 そんな会話がふっと浮かんだ。

 それが彼女と交わした初めての会話だった。

 それは客が一ダースも入れば窮屈に感じるほの暗いスナックでのことだった。

 どうしてそんな話題になったのかは思い出せないが、ふたつの異なった語感が妙に気に入っていたことだけははっきりと覚えている。

 そして季節が六月だったことも・・・Kiss04

 「わたし教養ないから横文字にあこがれがあるみたい。」

 「あこがれかぁ・・・」私はじっと虚空をみつめている女の表情にふと寂しさを見つけた。

 彼女はそんな私の視線から逃れるように席を立った。

 「わたしもビールいただくわね。」とカウンター越しにママにウインクをして見せた。

 紫煙に映るなだらかな肩から細い腰にかけてのやわらかな線がきれいだった。

 「そんな目して、エッちゃん口説かないでよ。」ママの陽気な目が私をにらんでいた。

 そう言われて、彼女は驚いたようにふり向いた。が、その瞳に不安の色はなかった。

 二時間ほどたわいのない話をして、その夜は店を出た。

 アカシヤの香りが澄んだ夜空を包み込み、星が爽やかにまたたいていた。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

哀 蛾(1)

 澄みわたる五月の空に、芽吹きはじめた草木の香りがやわらかな風に舞い、閉ざされた季節から解き放れたものたちの笑顔が春の陽にまぶしい。

 私は色のくすんだ冬着のまま、陽だまりの中に立ち尽していた。

 凍てつく風雪の中で、時間が長い長いトンネルのように続く北国では、誰もが春の訪れを願っているというのに・・・Tetsugakuwins

 道行くものたちの色が淡くなっていっても、私はたぶん冬着のままだろう。

 気が遠くなるほど長かった季節はすでに去ったはずなのに・・・

 華やかなキャンバスからこぼれおちそうになっている色彩さえ、半透明に凍りついた窓ごしに眺めている背中を、薫風が哀れむように吹き過ぎる。

 哀しみをおびた女の視線が私の意識の奥底にまつわりついてくる。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

愛しています

 "愛してる"って

 何度呟いたかわからない

 言葉に出せなくて

 呟きだけで終わってしまう

 "抱きしめて"って

 何度想ったかわからない

 言葉に出せなくて

 愛すること

 こんなにも人を愛したのは

 初めて・・・・・

 こんなにも胸が熱くなるほど

 愛したのはあなただけ
 
 もう他の誰も愛せない

 「愛しています」

 あなた一人を・・・・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

愛しています

 "愛してる"って
 何度呟いたかわからない

 言葉に出せなくて
 呟きだけで終わってしまう

 "抱きしめて"って
 何度想ったかわからない

 言葉に出せなくて

 愛すること
 こんなにも人を愛したのは
 初めて・・・・・

 こんなにも胸が熱くなるほど
 愛したのはあなただけ
 もう他の誰も愛せない

 「愛しています」
 あなた一人を

| | コメント (0) | トラックバック (0)

星より…

 そんなに

 みんなで願いを掛けないでよ

 僕が願いを聞き入れるのは

 あの子だけなんだから…

 僕はね…

 あの子の笑顔をいつも見ていたいだけなんだ

 それが僕の願いごと

 あの子がいつも笑顔でいられますように…

| | コメント (0) | トラックバック (0)

贈り物

 箱を開ければ君の笑顔が見える

 素敵な想い出をいっぱいもらったね

 青く輝く海も薔薇の花園も・・・

 僕の中ではとても素敵な贈り物だよ

Bouquet

 箱を開ければ君の涙が見える

 素敵な想い出をいっぱいもらったね

 辛いことも苦しいこともあったけど

 僕の中ではいつも素敵な贈り物だよ

 でも、僕から贈るものはもう何もない・・・

 せめてこの想いだけでも届けられたなら・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

初雪

 汚れてしまった僕の心に

 今年も冷たい雪の精が舞い降りる

 身も凍る北風と共に・・・Tetsugakuwins

 鉛色の空の奥から

 僕の心を埋め尽くすように

 限りなく・・・

 僕は冬枯れの木立のように

 ただ無抵抗に立ち尽くす

 悲しみに染まった僕の心に

 今年も淡い雪の精が舞い降りる

 肌を刺す北風と共に・・・

 鉛色の空の奥から

 僕の心を埋め尽くすように

 限りなく・・・

 僕は道に迷った子犬のように

 人待ち顔で立ち尽くす

 この初雪のように融けてしまうことができたなら・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

秋の雨

 冷たい秋の雨の中、僕は独りたたずんでいた

 特に何をするわけでもなく・・・

 雨の中にポツンと傘も差さずに

 冷たい雨に濡れながら僕は思い出した・・・

 僕が犯した罪・・・

Kouyou01  君への想い・・・

 僕は一体何をしたのだろう?

 思い出すのは君との想いでばかり・・・

 君と笑ったり、怒ったり、泣いたりした

 たくさんの想い出・・・

 辛い思いも、悲しい思いもたくさんさせた

 でも君はもう僕に語ってくれない・・・

 もう会うこともできない・・・

 僕は君を傷付け、守ることもできなかったから・・・

 僕の罪は決して消えることはない・・・

 この雨に流されることも無い・・・

 僕はどうなってもいいが、彼女だけは助けてほしい

 彼女にもう一度笑顔を・・・

 永遠と降り続く雨よ・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

遠い日

 辛くて淋しくて
 ふと後を振り返って見たくなる
 後にはもう何もないことを知っていても・・

100

 あのまぶしかった夏の陽射しも
 山々の影も
 潮騒の音も
 君の後姿さえも・・

 今でも目を閉じると
 まぶたの裏にはいつも君の笑顔がある
 あれはもう遠い日の想い出なのに・・

 悲しくてせつなくて
 ふと後を振り返って見たくなる
 後にはもう何もないことを知っていても・・

Time_02217_2

 華やかな薔薇の花園も
 青い海の輝きも
 悲しい君の涙も
 君の髪の香りさえも・・

 今でも目を閉じると
 まぶたの裏にはいつも君の笑顔がある
 本当に遠い日の想い出なのに・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

バラとナイチンゲール(4)

 いかにもクリスチャンの国らしい物語ですが、愛の姿をつきつめていくとこうなってしまうのかもしれません。

 この物語を単に綺麗ごとや夢物語と考えるのではなく、こうした物語が生まれた背景や作者の想いを想像してみることも大切だと思います。Time02083

 この物語の背景には数え切れないほどの辛く苦しい恋愛があり、仮にこの世では成就することのなかったお互いの想いも、その想いに偽りがなく真摯なものであれば、別の世界で報われることもあるということを私たちに教えてくれているような気がします。

 相手に何かを求めるのではなく、ただひたすら与え続けることの大切さを考えてみてはいかがでしょうか?

 ナイチンゲールの歌やバラの香りのように・・・

| | コメント (0) | トラックバック (0)

バラとナイチンゲール(3)

 けれども神々はダイナスの死を望みませんでした。

 水面に達するやいなや、彼は小鳥の姿にかわったのです。

 それ以来、その流れのそばの潅木のところでは、ナイチンゲールのなき声が聞こえるようになりました。

 毎晩のように愛を歌っているのです。

 その歌声は愛くるしく、高慢なスカイストラの心まで打ちました。

 娘はすっかり歌声のとりことなり、毎晩、岸辺に駆けていっては、ナイチンゲールの歌に耳をすましたのです。

Rose  憧れはつのる一方で、スカイストラの心を焼きつくしました。

 いまにも花のように枯れてしまいそうです。

 彼女はとうとうナイチンゲール恋しさのあまり死んでしまったかもしれません。

 ところが神々はスカイストラの死を望みませんでした。

 春が終わって、ナイチンゲールが歌うのをやめたとき、スカイストラは百枚の花びらをつけた一輪のバラにかえられたのです。

 それ以来、春にはいつもナイチンゲールはバラに愛を歌い、バラは百枚の花びらの香りでナイチンゲールにお礼をします。

 こうしてふたりの幸福には、何ひとつ欠けるものがありませんでした。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

バラとナイチンゲール(2)

 けれども、身も心もささげ、いっさいの持ち物を投げ出してまで彼女を愛していたのは、ひとりの若者だけでした。

 ダイナスです。

 彼は、スカイストラのためなら死んでもいい、と言っていました。

 けれどもスカイストラは笑って相手にしません。Time_02007

 ダイナスがそう言う度に、スカイストラは「そんなの言葉だけと」と言いました。

 ダイナスの心は深く傷つき、とうとう最後のスカイストラに「本気だとわかってもらうには、何をしたらいいか教えてほしい」とたのみました。

 そこでスカイストラは、ふたりの立っている岸のそばを流れる急流を指差して、言いました。

 「もしもわたしのために死ねるというのなら、飛びこんでごらんなさい」。

 そういって彼女はダイナスをからかったのです。

 彼はためらわずに急流に飛びこみました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2008年3月 | トップページ | 2008年5月 »